朝起きて、顔を洗う。ひげを剃り、服に着替える。
料理をしたり、洗濯をしたり、掃除をしたり、靴を磨いたり・・・・・・
くらしを観察していると、不足が見えてきます。
日常生活の中で「なんとかしのいでいること」が見つかります。
それをモノで、道具をつくって解決することが、デザイナーの仕事だと思います。
だから、いつも考えています。
永年放置されてきた問題を解決できるようなユニークな機能とカタチはないかな、と。
くらしの目線を大切に、世の中に共感されるプロダクトを育ててゆきたいと願っています。
40歳をすぎて、家事をすることになりました。
夕方になるとスーパーに出かけて家族の食事をつくるのですが、ちょうど仕事に集中したい年齢でもあり、いつもイライラしていました。
そんな状況を変えてくれたのが〈オリッシィ〉。
買い物を完璧に遂行するための〈折る〉チェックメモ。
スーパーの通路で思いついた、主婦目線のプロダクトです。
〈オリッシィ〉のおかげで、家事はデザイナーとしての「個性」だと気づきました。
それ以来、料理をしながら、掃除をしながら、くらしの観察を続けています。
人が働く姿を見るのが好きです。
大工さんや料理人が道具を操る姿勢には、舞踊や落語のような、美しい「所作」を感じます。
使うと自然に、ふるまいが美しくなる。
そんなプロダクトはつくれないか?
近ごろは、所作がいちばん気になっています。
袱紗をモチーフにしたペンケース〈ロールペントレイ〉。
万年筆を優美にメンテナンスする〈スイト・クリーニングペーパー〉。
A3書類を折り目なく持ち運び、プレゼンするための〈A3ポートピット〉。
人と人が出会う場、人が人を評価する場で、美しい所作を味方にしてはどうでしょう?
クリエイターやビジネスマンのセルフブランディングに貢献したいと願っています。
学生時代、ある建築家のもとでモダニズム建築を学ぶ幸運を得ました。
模型をつくり、図面のお手伝いをさせていただきながら、美意識や空間認識、デザインの基礎を学んだ3年半は、僕の宝物です。
卒業後は10年ほど抽象アートに取り組んでいましたが、流れ流れて、グラフィックデザインからブランディングへ、そしてプロダクトデザインへと進み、気がつけば、建築に戻っていました。
行き当たりばったりの人生ですが、一周まわってたどりついた建材のプロダクトデザインに、いまもっともやりがいを感じています。
建築とアートを経験してきたデザイナーだからこそ、できるデザインがある。
選べる戸あたり〈TOATOA〉も、ミニマルアートをコンセプトとするノンスリップ〈Previo T〉も、そんな「道草」から生まれたプロダクトです。
とはいえ建材デザインは、建築設計に携わるプロフェッショナルをサポートする仕事です。
主役はあくまでも建築家や意匠設計者。
デザイナーは、一歩も二歩も引いたスタンスが求められます。
建築家の設計実務をサポートさせていただきながら、建材メーカーのみなさまとともに、この世界をよりよい場所にしたい。
美しい場所、調和ある場所にしたい。
そんな願いを、いつも心に抱いています。